2013年1月25日金曜日


さっそく借りてきて前書きと結論を読みました。
ジョーン・ワラック・スコット著、李孝徳訳『ヴェールの政治学』(みすず書房、2012年)

面白いです。

このフランス対フランスのムスリムという対の構成は、
ヴァーチャルなコミュニティ形成に作用している。
それは、論争が続いた結果生まれた政治的言説なのである。



文化は、フランスとムスリムのあいだにある差異の原因だと言われているが、
実際には、文化という概念は、歴史的に固有な政治的言説の結果であると私は論じる。

(P13-14より抜粋)

著者のジョーンスコットは、『ジェンダーと歴史学』という著書で、
女性がいかに歴史、history、his storyから通時的に排除されてきたのか、というのを
理論と、実証的な事例研究の両面から論じました。
今日ではジェンダー論と歴史を学ぶ際の教科書になる、草分け的な研究と言われています。

『ジェンダーと歴史学』で彼女は、

ジェンダーとは、肉体的差異に意味を付与する知

とし、ジェンダーがすでに原因となってセックスの神話を生み出しているというロジックでもって説明しました。
原因と結果がコンガラガッテいるという主張は、『ヴェールの政治学』で論じられた、スカーフ(ヒジャブ)をめぐるムスリムとフランスの「文化衝突」にも当てはまります。

スコットがユダヤ系というのも知らなかったし、
1941年生まれでこれだけ精力的に研究を続けているというのにも感動しました。

ちなみに、「スコット」は彼女のパートナー(夫?)も同じなので、彼の姓ではないかと推測されます。


大鵬は、1940年にサハリン(樺太)で
日本人の母親とウクライナ人の父親のあいだに生まれた。

名前は、Ivan Boryshko。イヴァン。

父親は、反共主義者だったので1917年のロシア革命(Bolshevik Revolution)の後、
ウクライナからサハリンへ逃げていた。

当時、サハリンは日本とソヴィエト両方に領有されていたが、
戦後はソヴィエトの管轄となった。

サハリンが日本でなくなったため、
大鵬(当時イヴァン)と母親は北海道に送還されたが、
父親はどうやら逮捕されたらしい。

父親の行く末を家族は知らないとのこと。

大鵬は力士として有名になってソヴィエトへツアーで出かけた際、
父親を捜したが見つからなかった。

大鵬、イヴァン、本名は納谷幸喜、
ウィキペディアによると母親の再婚で住吉姓を名乗っていたこともある。


把瑠都や琴欧州や黒海を先取りしていた東欧にルーツのある力士の人生は、
こんなだったのか、とせつなくなった記事

2013年1月9日水曜日

閉鎖される学校と人種

ニューヨーク市では2002年のブルームバーグ市長就任以降、140もの公立学校が閉鎖された。

閉鎖された学校は、
同じ建物内の他の公立学校やチャータースクール(親が好んで入れる私立学校)
に取って代えられるという。

教育・学校制度は米国内の人種による住居分離と密接に関係しているが、
ブルームバーグ市長のこの政策は何を意味しているのか。

ニューヨークタイムズの記事はこちら

2013年1月8日火曜日

『創』2013年1月号


雑誌『創』にはこちらからリンクできます。

P87 森達也の記事より抜粋

「 最近のテレビニュースは容疑者の呼称を『男性』『女性』ではなく『男』『女』とアナウンスする。
明らかに『悪いことをした人なのだから丁寧な呼称を使うべきではない』的な意図を感じる。
 でも無罪推定原則の観点からは、『男性』『女性』でまったく問題はないはずだ。
いや問題がないどころか、『男性』『女性』と呼ぶべきなのだ。
 ニュースで『男』『女』との言葉を聞くたびに、まるで『絶対的な正義』がニュース原稿を読んでいるような気がして、とても嫌な気分になる。
子供が傍にいれば耳をふさぎたくなる。今は『男』『女』などと呼び捨てにされて『ガンクビ』を晒されているけれど、まだこの人が犯人だと決まったわけではないのだよと説明したくなる。」

この記事を読んでしばらくしてから、チノパンが駐車場で男性を轢き殺すという事件があった。
元総理大臣の甥っ子と結婚したアナウンサーの彼女は、逮捕もされず「容疑者」呼ばわりもされていない。
ネットのニュースにあるコメント欄の書き込み多くが「『千野さん』じゃなくて『千野容疑者』だろ」というものだった。
多くの容疑者を『男』『女』呼ばわりするマスメディアなのに、権力者には「さん」付けなのかね。