さっそく借りてきて前書きと結論を読みました。
ジョーン・ワラック・スコット著、李孝徳訳『ヴェールの政治学』(みすず書房、2012年)
面白いです。
このフランス対フランスのムスリムという対の構成は、
ヴァーチャルなコミュニティ形成に作用している。
それは、論争が続いた結果生まれた政治的言説なのである。
…
文化は、フランスとムスリムのあいだにある差異の原因だと言われているが、
実際には、文化という概念は、歴史的に固有な政治的言説の結果であると私は論じる。
(P13-14より抜粋)
著者のジョーンスコットは、『ジェンダーと歴史学』という著書で、
女性がいかに歴史、history、his storyから通時的に排除されてきたのか、というのを
理論と、実証的な事例研究の両面から論じました。
今日ではジェンダー論と歴史を学ぶ際の教科書になる、草分け的な研究と言われています。
『ジェンダーと歴史学』で彼女は、
ジェンダーとは、肉体的差異に意味を付与する知
とし、ジェンダーがすでに原因となってセックスの神話を生み出しているというロジックでもって説明しました。
原因と結果がコンガラガッテいるという主張は、『ヴェールの政治学』で論じられた、スカーフ(ヒジャブ)をめぐるムスリムとフランスの「文化衝突」にも当てはまります。
スコットがユダヤ系というのも知らなかったし、
1941年生まれでこれだけ精力的に研究を続けているというのにも感動しました。
ちなみに、「スコット」は彼女のパートナー(夫?)も同じなので、彼の姓ではないかと推測されます。