2011年11月19日土曜日

失踪―ボブ・ディランをつかまえて

フィリップ・ロス著、御木陽太郎訳
『失踪―ボブ・ディランをつかまえて』(扶桑社、1989年)Blue Heron, 1985


先月の『虐殺器官』とダブるものがあるのですが、なぜ主人公の探偵チックな男は、
探している女性に恋をしていい感じになってしまうのでしょう。

もちろん、そうしないと物語は生まれないんだろうけど、何かプロットがありきたりで詰まらない。
フィリップ・ロスは『白いカラス』Human Steinという映画の原作者で、アメリカでは大変有名な小説家ということで手に取って見たのですが、
本作はあまり好きにはなれませんでした。

なかでも、主人公のマーレーが意中の女性であるサラに自分の理想を押し付けているところ。
ロスはそれを皮肉に意図的に描いているのかな。なんとも詰まらなかった。
とはいえ、恋愛小説に終始しているわけではなく、ヴェトナム戦争の時代に学生運動や反戦の活動家を両親に持ち、
1980年代に思春期を迎えた女の子を助けるというのが物語の趣旨です。
いい意味で何度も期待を裏切られる展開の後半は、頁をめくるたびドキドキします。


こういう、頭がよくて一匹狼で、しかも美人!な女性に惹かれるという小説、それも男性による小説は考えてみれば世の中に腐るほどありますね。
恥ずかしながら私が高校生の時一生懸命読んだ辻仁成『ニュートンの林檎』もその一つなんだな。
元子に憧れた割には、私バイクなんて乗らなかったな~なーんて。

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