2011年9月6日火曜日

まとめ_アレックス・ヘイリー著、松田 銑訳『北極星をめざして』

アレックス・ヘイリー著、松田 銑訳『北極星をめざして』(1989年、社会思想社)
A Different Kind of Christmas, 1988

時は南北戦争直前の合衆国。
ニュージャージー州のプリンストン大学へ入学した南部の奴隷主の息子、フレッチャー・ランドールは、学生同士の不和を訴え、寮を変えてもらった。
新しい寮で友人になったのは、ペンシルベニア州フィラデルフィア出身で、クウェーカー教徒の三兄弟。
クウェーカーは平和主義で、黒人解放運動の担い手になったことでも知られている。
彼らの人種観にかたくなに抵抗しながらも、故郷への招待をフレッチャーは受け入れた。
とはいえ、フィラデルフィアで黒人に握手を求められる体験などし、やはり、すっかり怒って帰ってくる。
彼の心はかき乱され、クウェーカー三兄弟とは付き合いをやめるものの、勉強が手につかなくなりかつての成績優秀さは崩れ、これまで当然視していた白人と黒人の違いについて考え始める。
なお、授業で取り上げられた文章に感動したとき、彼はその書き手を合衆国憲法の起草者の一人かと考えたが、それがフレデリック・ダグラスという黒人であると聞かされたとき、非常に驚いた。
そして、この「事件」をきっかけに、彼はそれまでの人生とはまったくの逆方向、すなわち、地下鉄道(19世紀中頃から奴隷の黒人を解放させる目的で、主に南部から奴隷制を禁止している北部の州ややカナダへ秘密に送った動き。)の協力者となるのである。

「人間家族のほとんどすべての人種から構成されている……わが国のような複合国家においては……法の前におけると同じく……貧富の差、身分の高下、黒人、白人の区別があるべきではなく……万人に対して……一つの国家、同一の市民権、平等の権利、そして共通の運命が存在すべきものです。
 もっとも有名でない庶民に対しても……その生活権と、その自由と幸福を追求する権利とを・・・・・擁護することができない政府……あるいは守ろうとしない政府は……ただちに改革するか、あるいは打倒すべきです」
75頁

フレッチャーを変えたのは上記の文章であった。

合衆国憲法は革命論やキリスト教思想など様々な要素を持ち合わせているが、個々の要素だけを抜粋すると、保守とリベラルのように、まったく矛盾した主張になる。
ダグラスをはじめ、多くのマイノリティは、革命論を運動の中心に据えて、アメリカニズムを権利獲得の礎にしてきた。

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